2013年9月16日月曜日

最後の壁

数年前までは敷居の高かった動画配信も、スマホの普及で万人が気軽に
出来るようになった。
いよいよ、最後の壁を誰もが乗り越えられる。そんな時期が迫っている。

恐らく3年後の参院選(あるいは、衆参同時選挙になるんだろうか)、
いや、それを待たずに2015年に予定されている統一地方選の頃には
ブログやツイッターだけでなく、政治家が自らサイトを立ち上げる事も
普通になっているかも知れない。

実際、ブログやツイッターを開設するのと、サイトを運営更新するのは
さほど変わりない。
各ツールの更新に掛る動作を振り返ると、とてもよくわかる。

1:ログインする
2:文字を入力する
3:画像や動画をアップロードする
4:更新する

大半はこれだけで事足りる。
サイトの場合はこれらの他に、Webサーバへのアクセスが発生する。
中にはMovable TypeやWordPressのようなブラウザベースの
CMS(Contents Management System。要は、サイトを運営する仕組み)も
あるが、サーバーへのインストールやサイト自体のデザイン、
FTPの設定などがほんの少し面倒なのを除けば、基本的には1から4の
動作の繰り返しだったりする。

それについ最近は、無料でも手軽に洗練されたサイトを
立ち上げる事ができるようになってきた。
「Jimdo」や「WIX」、「Webnode」などを使えば、
誰もが一定のクオリティを保ったサイトを開設できる。

<Jimdo>
http://jp.jimdo.com/

<WIX>
http://ja.wix.com/

<Webnode>
http://www.webnode.jp/


テンプレートのアレンジから始めるので、オリジナリティを追求するには
それなりの経験を要するし、ページ間の繋がり(リンク)を考えなければならないなど
ブログやツイッターに比べたら手間が掛るのは否めない。
それに、フェイスブックのような「いいね!」が返ってくるわけでもない。

ただ、サイトをひとつ立ち上げた時の達成感は、ブログ記事を10件書くよりも
100回のツイートをするよりも遥かに大きい。

そしてなにより「伝えたい事がはっきり」してさえいれば、
それだけでも魅力的なサイトに仕上がる。

最近オープンした知己のサイトが、それを証明してくれている。
本人曰く「不器用ながら」とはいうものの、私は充分立派なサイトだと思う。

<気仙沼バレエソサエティ>
http://kesennumaballet.jimdo.com/


じっくりサイトを眺めると、本当に「いいな」と思う。
応援したくなる。
うん、お世辞抜きに、いい。

なぜそう感じるのかと自問自答して、はたと気が付いた。

1:作り手の、サイトの主役への想い入れが有るか無いか。
  ここでは現在のソサエティ代表・高橋知子さん、そして小さなバレリーナたち。
  そういう目には見えないものが、行間から溢れている。
  
2:何を伝えたいのかが、明確になっているかどうか。
  これは全てのサイトに言える事なのだけれども、それがあるだけでも
  違ってくる。

ITスキルの巧拙や、グラフィックデザインの素養といった美麗さは、
それはあまり関係ない、以上の2つさえ押さえたら、
それだけでも良いサイトになるのだろう。
そして、作り手の想いとサイトの主体の想いがシンクロすればするほど、
ホームページやサイトといったものは、どんどん良くなり充実していく。
伝えたい、知って欲しいという想いがあれば、技術は後からついてくる。

アクセス解析や検索エンジン対策、コンテンツのブラッシュアップなど
「もう一段、あるいはもう二段」上げるための方法論というものは
誰もが出来るわけではない。それに手間もかかる。
こうして書いている私自身でさえ、満足に至る事はそうそうない。

それでも、せっせとこしらえたものが世界中の人の耳目に触れる、
自身の発信を誰かに見つけて貰える喜びや、自らの発信が誰かの
プラスに作用するといった、伝わる嬉しさとでも言うんだろうか。

多くの人が、意識していないだけなのだと感じる。
メールが届く。つぶやきやエントリが届く。サイトを見てくれる人がいる。
一見すると当たり前のように感じられる、その事の凄さ。
そこに気付いていない政治家が多い。

ここ暫くはネット選挙の話題を引っ張る形で同種の話題が続いてしまった。
それでも、政治家をSOHOに置き換えたら「まだやってないの?」というレベルの
話でもある。
そういう意味では、公職選挙法の縛りやネット選挙の解禁に関わらず、
政治家のネット活用自体が遥かに遅れているんだなと改めて感じる。
市井の人たちはどんどんやっている。政治家の世界が(たぶん)一番遅れている。


いずれにしても、ホームページの開設や運営が特別な事ではなくなる、
そういう時代がすぐそこまで来ている。
そうしたインターネット発信における「最後の壁」が崩れた時、
政治の分野におけるインターネットはまた一歩前進するんじゃないだろうか。
そう思っている。

2013年9月14日土曜日

高橋茂さんの本、2冊(後編)

前回のエントリでも触れた、「安曇野のネット軍師」こと
高橋茂さんの著作。
勢い余って、迷わずもう一冊も注文した。



<電網参謀 「デジタル軍師」が語る自伝的ネット戦略論>
http://www.amazon.co.jp/dp/4886462014

2冊併せて読むと、ネット選挙の夜明け前と現在進行形を
知ることが出来る、それこそ年代記のような感慨に包まれる。

最新作の『マスコミが伝えないネット選挙の真相』ではネット選挙というか、
ネットポリティクス全般に渡り広範囲な考察を披露頂いており、とても勉強になった。
こちらは氏の初陣となった長野県知事選で、まったく政治との関わりがないところから
如何にして最強の軍師になっていったかが綴られている。
こちらの方が、個人的には興味をそそられた。


「共感」なのかも知れない。
私がこっちの本をより面白いなと思うのは、幾つか理由がある。
私自身の「IT事始め」がWindows普及の前後だった事や、
大学のレポートがWordでなく「ワープロ」だったこと。
「電子メール」というものがまだ一般的でなかったこと。
「ぴーひょろろ」の音が懐かしいモデムを知っている世代であること。
「スマホ」も「光」も無かった時代。
とにかく昔は「ないない尽くし」だったことが伺える。
その分、どうやって伝えるかという本質の部分で苦心する。
制約の中で、あれこれと知恵を絞る。
どうやって効果的に使いこなすか、試行錯誤を繰り返す。

かれこれ6年前の参院選からのキャリアしか持ち合わせていない私でも
そう思うのだから、高橋茂さんの場合は、それこそ生き字引のような方から
眺める今のIT事情はどうなんだろう。
自分の拙い経験と照らし合わせて読むとなるほどと思うし、
同時に「そこまでは思いつかなかった」と目から鱗の戦術も沢山あった。
むさぼるようにページを捲った。
『マスコミが伝えない~』が最新ヒットなら、
『電網参謀 ~』は定番のクラシックといったところか。
その分野に興味の方は、是非とも併読されることをお奨めしたい。


余談だが、本書ではメルマガの連載小説
「天国のいちばん底」配信の舞台裏についても紹介されている。
『勝谷誠彦のxxな日々。』読者の私には良かった、なんとなく
得した気分。

2013年9月12日木曜日

高橋茂さんの本、2冊(前編)


この名前に反応する人は、恐らくよほどのネット選挙通に違いない。
もしくは、熱狂的な「カツヤさん」のファンかも知れない。

いつも購読しているコラムニスト・勝谷誠彦さんの有料メールマガジン
「勝谷誠彦のxxな日々。」、そのバックヤードを支えているのが世論社・代表取締役の
高橋茂さん。つい最近、ネット選挙にまつわる本を上梓されたとメールマガジンの
付録「週間迂闊屋」で知り、興味の赴くままにAmazonで注文してみた。



『マスコミが伝えないネット選挙の真相』
http://www.amazon.co.jp/dp/4575154172

私自身は別にその世界で碌を食んでいるわけでもなく、何人かの選挙を
IT面で支えたといっても下手の横好きというか、成り行きで助っ人をしてきたに
すぎない。
同じ高橋でも氏に比べたらそれこそ足許にも及ばないのだけれども、
それでもネット選挙というかネットポリティクス、いやインターネットの
可能性を感じて様々な試みをしているという点では、接点が無いながらも
尊敬する先達である。
私の何歩も先を進んでおられる方なので、とても興味深く読ませて頂いた。

実際に動いている人の記録と言うのは案の定面白く、これまでのネット選挙関連の
書籍の中では最もエキサイティングな一冊だった。
方法論や技術論に留まらず、信念というか核心というか。
「そうそう、そうなんですよ」ページを捲りながら何度頷いたかわからない。

アマゾンのレビューにも、以下のような感想を綴った。

~~~
選挙を知っていてもネットの事は詳しくない、ITに長けていても選挙戦の機微はわからない。
有権者や第三者で理屈を並べても、内側は垣間見えない。そういう本が溢れる中、
本当に「やっている」人の論考は、本質論としてもテクニックとしても満足できる。
「そうそう、そうなのよ」「本当に分かっていないと書けないよね」
膝を叩きながら、あっという間の221ページだった。
本書の4ページ目に書かれた一節が、何よりも秀逸だった。
発行間もないので、著作権を侵さない事を願いつつ敬意を込めてそこだけ引用したい。
「あなたたちが、今までどんなことをやってきて、ふだん何をやっていて、これからの日本をどうしたいのか。
それが知りたいんだけど。選挙期間中はそれを伝えてくれればいい。インターネットはそのためにある。」

行き着くところは、畢竟そこなのだろう。

~~~

私などは各分野のエキスパートでもないし、せいぜい「何人か手掛けた事がある」
程度に過ぎない。
それでも、かじったからこそ前述の数行に込められた意味の大きさが解る。
本当に、それしかないのだ。
除隊の置き土産がわりにこしらえた「四方、波高し」も、それをまとめた時は
意識しなかったのだが、改めて読み直すと氏の提唱するエッセンスそのものだった。

所詮、本人の中身や人となりに勝るネット戦術などは存在しない。
なので私が政治家の先生方や候補者の方にアドバイス差し上げる際には
いかにして本気度合や真摯さ、情熱を表に出すか、その点に重きを置いている。

残念ながら、それを体現していると感じさせてくれた候補はだれだけいただろう。
高橋茂さんの最新刊を読み終えて、そんな事を思い出した。